ITトレーニングを受講する機会は数多くあり、あらゆるご世代の皆さんが身近な機会を活用しています。どんなカリキュラムでも、どんなご世代の受講者であっても、トレーニングが功を奏するか否かは、受講者ご自身にかかっています。私たちのたった一つの心掛けで、想像を超えたスキルアップが可能です。
ある受講生の心掛け
初回の講座にて
「〇〇さん、お亡くなりになったのね…」、今年5月、市の広報を見ながら妻がつぶやいた。享年88歳。
このお方は、今から10年ほど前、市の社会教育課が主催するパソコン講座にはじめてお顔を見せてくださった男性です。少々不愛想なお方といった印象で、パソコンをお使いになったこともなく、何かと個人的サポートが必要な方でした。
そんな彼が、初回講座終了後に「パソコンを買いたいのですが…」ボソッとおっしゃるので、さっそくヤフオクで手頃なものを落札し整備しなおしてご用意しました。
2回目以降の講座にて
初めて手にしたパソコンに、とてもうれしそうな笑顔を浮かべ、「皆さんに追いつけるようがんばります。」とおっしゃいましたが、実はこの「がんばります。」には、私が想像だにしなかった決意が秘められていました。
3回目の講座の折、今まで右手の人差し指1本でキーボードを押していた彼が、左右の人差し指を使ってタイピングしていたのです。「〇〇さん!倍速のタイピングですね!」と声をかけると、照れくさそうにしておられました。
その後、講座が回を重ねるごとに、2本が4本、6本と増えていき、促音・拗音の入力も難なくこなせるようになっていかれました。タイピング速度はともかく、明らかにトレーニングを重ねている指使いです。
「何かやってますね?」とお尋ねすると、笑いながら「これ、やってます。」とプリントアウトしたWord文書を見せてくださいました。そこに印字されていたのは、新聞の社説欄のコピーでした。パソコンが手に入ってからの日課にしているとのことで、毎日1000文字を越える社説をタイピングし続けているとのことでした。その頃には、パソコンの様相もかなり使い込まれた印象で、「あながち誇張でもないな」と思いました。
その後、Wordのフォント書式や段落書式も使いこなせるようになり、Excelにもチャレンジなさり、パソコン講座の常連さんになられ、昨年度の講座にも参加なさいました。この方の存在は、講座で学ぶ受講生の皆さんにとっても良い刺激となり、今年も講座は盛況です。
昨年度の講座にて
昨年の講座に87歳で参加なさった折「わしはもうこれ以上は上手くなれん…」ボソッとおっしゃいました。寂しさや無念さではなく、頑張ってきたご自分を労っているような笑顔を浮かべながら。その笑顔が今でも脳裏に焼き付いています。これが「I’m OK!」なのだと感じた次第です。
インターバルトレーニングのススメ
陸上競技でのインターバルトレーニングとは意味合いが異なりますが、ITトレーニングでも、インターバルを活用した自己トレーニングは間違いなくスキルアップを促進します。つまり、講座と講座の間に自分のペースで行う自主トレーニングです。
課題を貰って行うのも効果的ですが、課題を見つけて行うトレーニングのほうが効果大です。上述の○○さんは、新聞の社説の他にも自治会関連の様々な書類を引き受けてパソコンで作成していたようです。
違いを生じさせるのは、「気概」かもしれませんね。受け身ではなく自分から進んで取り組むインターバルトレーニング、これがITトレーニング受講を成功させる秘訣です。
インターバルトレーニングのチャンスは日々の職務の中に見出せるかもしれません。例えば、前回受講した際に学んだPCの新たな操作法を職務に活かすチャンスはないでしょうか?職場の同僚や後輩と共有出来ないでしょうか?自治会や地域のために活かせないでしょうか?
視点を変えれば、トレーニングのチャンスはいろんなところにあるはずです。
ITトレーナーの心得
ITトレーナーとして受講生の前に立つ方々は、トレーナーとは誰のことか、わきまえ知ることが必要です。それは決して、セミナー会場や教室にしか存在してはならない訳ではありません。むしろ、一人一人の受講生が数多くのインターバルトレーナーを持ち、家庭や職場、そして地域社会の中でその方々の助力を得ながら、スキルを自分のものにしていく、それこそが理想です。
名も知らぬインターバルトレーナーの方々の助力があってこそ、ITトレーナーである私たちは自らの職務をこなしていける、こうしたわきまえがあれば、素直に「間違っていました。訂正します。」「私にはわかりません。申し訳ありません。」が言えるトレーナーに、受講生の共感と信頼を勝ち得る存在になれるのです。
今年、お亡くなりになられた私自身のインターバルトレーナーから、そんなことをお教えいただいたと考えている次第です。